民主党はどこに行くのか

 昨年9月に誕生した民主党政権。ダム凍結に始まり、事業仕分け、官僚排除と戦後60年以上続いてきた自民党政権による政官民癒着、たかり、官僚政治に初めてメスが入ったとそれなりに評価していた。一方で民主党の小沢支配と鳩山首相の優柔不断さは将来問題になるだろうと思っていた。

 昨年は、東京地検特捜部が鳩山首相の資金管理団体の収支報告書にウソの記載がされていた問題について捜査した。母親から多額の資金が流れ込んでいたようであるが、企業献金の見返りを行っていた訳でもなく、東京地検特捜部は一体何をやっているんだと考えていた。国会議員の地位を利用して私服を肥やすような人間が多い中で政治の為に自己資金を使って、ある意味自己犠牲の精神で何が悪い、などとも考えていた。まあ、こういう金持ちの坊ちゃんや二世三世議員しか立候補できないような政治風土は問題であるとは思うが。

 これは東京地検による民主党追い落としの謀略か?などとも考えた。しかし、こういう問題は政権党になったら厳しく問いただされるべきであるのも当然である。野党と政権党では、その責任の重みが全く異なるのは当然であり、民主党の透明性が確かめられているのだと考えれば東京地検の捜査も納得できる。

 17日朝日新聞朝刊一面に『政権、検察と全面対決』、『小沢氏「戦う」首相「どうぞ」』の記事。小沢幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で元秘書の衆議院議員石川知裕容疑者が逮捕されたが、この事件は国内最大級の胆沢ダムの工事を巡る談合裏金との関連性が疑われている。小沢幹事長は、弁護士を通じて事実関係は包み隠しなく話しているというが、国民に対しては全く説明していない。

 記事の中に「小沢事務所がゼネコン談合組織の受注調整に影響力を持ち、多額の政治資金を集めていた実態が、捜査で明らかになった。」とあるが、ありそうなことだと思う。だからこそ小沢幹事長は説明しなければならないのである。もし、合理的に国民に説明できないのであれば、それは捜査内容が事実であるからだと世間に思われても仕方がないであろう。

 この件について鳩山首相が「どうぞ戦ってください」と小沢幹事長に伝えたことに対し、自民党の石破茂政調会長は、行政の長として不適当な発言だと批判していたが、正にその通りであると思う。検察は基本的に不偏不党であり、やましいところがないのなら正々堂々と弁明すべきなのに、それをしない小沢幹事長を支持表明する民主党と鳩山首相に将来はないのかな?と思う。

 そもそも民主党は、政治主導と言うことで憲法の政治的解釈を計画したり、官僚答弁を禁じたりしようとしているが、これは非常に危険な面を孕んでいる。自民党が憲法解釈を変えようとした時にいつも障害になったのは、官僚の答弁である。官僚の保守性は一方で時の政権の勝手な行動を抑える働きがあった。官僚は自分達の保身しか考えない悪い面を多く持つ中でそれなりの存在意義もあるのである。民主党ごとき政治家の層の薄い野合集団に日本の全てをまだ任せることは到底できない。

 こういう疑惑事件が起きると昔から必ずと言ってよいほど自殺者が出た。自殺者は常に下っ端である。今回も石川議員に自殺の恐れが出たと記事に載っていたが、やはり小沢はそういう暗闇の世界の人間なのであろうか。それに操られる首相だとしたら、日本の政治は救いようがない。

 話は変わるが、昨日16日の朝日新聞朝刊にフロントランナーとしてアメリカの映画監督マイケル・ムーア(55歳)が紹介されていた。マイケル・ムーアについては、この随筆の中でも約5年前に紹介したことがある(マイケル・ムーアも批判。従属小泉。)。アメリカ人がここまで資本主義を批判するのも珍しいが、それだけに極めて要点をついた批判だと思う。共感する部分が多いので記事を紹介する。抜粋部分は『太字』で表示します。

−公開中の最新作「キャピタリズム〜マネーは踊る〜」では、いよいよ敵の本陣に総攻撃を仕掛けたという印象です。−
 『それはいい表現だね。僕も年を重ねてきて、もう時間がないと思い始めた。個別の問題ではなく、事の本質をピンポイントで指摘しなければならない、とね。現代の資本主義は合法化された強欲なシステム。僕は民主主義を信じているから、この不公平なシステムをただしたいんだ。』

−民主主義と資本主義について−
 『民主主義と資本主義は正反対なんだよ。資本主義は少数が利益を得るように設定されている。対して民主主義はすべての人の利益を考える。』

−社会主義について−
 『・・・・資本主義は良くないから、じゃあ社会主義に向かおうということではない。今までの枠組みを越えて考えるべきだ。もう21世紀なんだし。僕らは僕らの時代にあったやり方を見つけなければいけないんじゃないか。』

−資本主義社会で、かつ民主主義が機能している国もありますね。−
 『僕は、起業してお金をもうけること自体が悪いと思っているわけじゃない。でも、他者を搾取したり、利益を不公平な形で分配したりしたら、それは一線を越えている。』

−自由競争だったのが、何か違うものに変化したと?−
 『資本主義を信奉する人たちはそもそも自由なんか信じていないし、競争を欲していない。彼らがむしろ一番求めていないのが競争だ。利益を独占したいんだよ。』

−資本主義の基本は欲望の充足にあり、欲望は人間の特性である点について−
 『そりゃ、僕だって、目の前にチョコチップ・クッキーの皿が置かれたら、できるだけ多く食べようとするさ(笑い)。健康面で良くないことが分かっていてもね。でも10枚のクッキーがあったとして、僕が9枚、最後の1枚を残りの9人が分け合うのは、果して良いと言えるかい?それが今の状況なんだ。』

−米国の問題は「アメリカン・ドリーム」に内在するのでは−
 『答えはイエスだ。夢っていうところが危険なんだ。いつか金持ちになれるって、鼻先にニンジンをぶら下げるようなものだ。君たちの国では「君もいつか大金持ちになれる!」なんて子どもを育てたりはしないだろう?「何それ、冗談も大概にしとけよ」で終わるよね(笑い)。』

−日本人にとって、米国は長い間、あこがれの存在でしたが。−
 『確かにいいところもあるよ。しかし、米国のように振る舞えば、米国のようになってしまう、と言いたいんだ。ジャズやジーンズの話をしているんじゃない。米国化が進めば、暴力も増えるし、銃の数も増え、アホな人々が増えてしまうんだよ。今すぐ止めないと(笑い)。』

−米国の好きなところ−
 『まず言いたいことを言えるところだね。米国人の明るい人柄も好きだし、中西部の風景も大好きだし。・・・・・・米国を愛しているからこそ、今みたいに世界に対して負の影響力ではなく、もっと良い影響力を持つ国だと思われたい。だからこそ、僕はこうした映画を作り続けているんだ。』

 朝、サンデープロジェクトで榊原英資氏は、民主党はフランスのような福祉国家とは表現しなかったが、アメリカ型ではないヨーロッパ型の分配に近い国を目指すと発言した。これには賛成である。その民主党の幹事長が現在の体たらくではどうしようもない。

 日本国民が選挙で社会を変えることができるんだと実感したばかりなのに、元自民党ドンの小沢さんはやっぱり変わってなかったんですね、ということで本当に情けない話である。 

(2010年1月17日 記)

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